パートナーの嘘を知り、信頼を取り戻せるか迷うとき

パートナーの嘘を知ったとき、すぐ許すか別れるかを決めなくてもかまいません。まず生活や安全に関わることを確かめ、その後に信頼と関係の選択を考えられます。

一つの嘘が、ほかの記憶まで揺らすとき

説明用の例です。パートナーが隠していた支出を知り、説明を聞いても「ほかにもあるのでは」と過去の会話を思い返します。眠る前に相手の様子を確かめ、朝になると「一緒に暮らし続けてよいのか」と迷います。金額の問題と、何を信じてよいか分からない苦しさが重なっています。

ここでは、今の暮らしで必要な事実と、相手の気持ちを完全に知りたいという願いを分けて考えます。家賃や共同の支払いへの影響、健康上の心配などは、現実の判断に必要な情報です。一方、「もう二度と嘘をつかない人だと確信できるか」は、一度の説明で確定できる問いではありません。

必要な説明を求めることを、全て「疑いすぎ」と片づけなくてよいのです。反対に、相手の行動を四六時中監視すれば信頼が戻るとも限りません。何が分かれば今日の生活を決められるか、どの確認が答えの出ない安心探しになっているかを、一緒に考えられます。

謝罪、許す気持ち、信頼して行動することは違う

謝罪を聞いて意味を感じても、すぐ以前と同じように任せられるとは限りません。怒りが少し弱まること、起きたことを許すこと、関係を続けること、金銭等を再び共同管理することは、別々に決められます。「謝ってくれたのだから元に戻すべき」と自分へ課さないことが大切です。

先ほどの例であれば、今後の生活費をどう確保するか、説明された内容と実際の支払いが一致するかなど、確認可能な話があります。相手が自分で担う対応と、あなたが肩代わりしていることも分けてみます。信頼の回復を、傷ついた側だけが疑いを消す努力にしてしまうと、何が変わったかが見えなくなるかもしれません。

同時に、確認できる取り決めがあっても、関係を続けたいと感じる義務はありません。NHSの一般向け情報は、関係の中の尊重や自分が担える範囲を考えること、つらい関係から離れる選択も扱っています。[1] あなたに和解を勧める資料でも、相手を悪い人と判定する資料でもありません。

話し合うなら、今日決めたい範囲を小さくする

安全に話せる関係なら、「なぜそんな人なのか」という人物全体の議論より、「今月の支払いについて、分かっていることを確認したい」と用件を区切る方法があります。分からない答えを無理にその場で作らせず、確かめる内容と、次に話す時期を分けることも考えられます。

説明用の言い方なら、「謝罪を受け取ることと、今すぐ以前と同じ管理へ戻ることは分けたいです。今日は支払いへの影響だけ確認したいです」と伝えられます。相手に全て納得してもらう台本ではなく、自分が混ぜたくないことを明らかにする言葉です。

話すたびに消耗するなら、休む、文面で用件だけ受け取る、個別の相談で先に考えるなどの選択があります。詳細を全て聞けば必ず安心できるわけでもありません。医療・安全・生活の判断に必要な説明と、聞くほど傷つく描写を、本人の希望に応じて分けられます。

怖くて説明を求められない場合は、安全の相談から

質問すると脅される、暴力がある、生活費を取り上げられる、通信や行動を監視される場合は、対等な話し合いの方法だけでは扱えません。内閣府は、身体的な暴力以外に、精神的・性的な行為や経済的な圧迫等も相談の対象になりうると示しています。[2] 個々の法的な該当性は別途確認が必要です。

この場合、相手へ相談を知らせることや、二人で面談することを一律に勧めません。安全な連絡手段を選び、配偶者暴力相談支援センター等へ個別に相談できます。切迫した危険があるなら、その場の安全と警察・医療の助けが先です。[3] 相手を信頼できるかの結論が出なくても、被害や不安を相談してかまいません。

借金、名義、住居、婚姻関係の手続きなどは、心理相談だけで結論を出さず、法律や生活支援の専門窓口で確かめます。身近な人に気持ちを聴いてもらうことも支えになりますが、本人の意思を越えて相手へ連絡したり、和解を急がせたりしない相手を選べるとよいでしょう。

支援の目標は、関係を必ず修復することではない

心理相談では、知った後の怒り、恥ずかしさ、自分を責める気持ち、確かめ続けて休めないことを話せます。相手が来ていなくても、本人の生活や決めたいことは相談できます。ただし心理職が、参加していない相手の真意や性格、今後嘘をつく確率を判定することはできません。

二人での支援を希望する場合は、その支援がこの問題を対象にするか、安全をどう確認するか、個別に話した情報の扱いを利用前に確かめます。続ける、保留する、離れる選択を、専門家に良く思われるために決めなくてよいことも大切です。支援の適切な説明と本人の自己決定は、職能団体の倫理でも重視されています。[4]

説明用の相談の一言:「信じたい気持ちはありますが、確認していないと怖くなります。今日の生活で必要な事実と、関係をどうしたいかを、別々に考えたいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。本人の傷つきや選択への迷いを扱う場であり、診断・法律判断や、相手を変えること、カップル療法の提供を約束するものではありません。

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参考・引用文献

  1. NHS Every Mind Matters「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」
  2. 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」
  3. 内閣府男女共同参画局「相談機関一覧」
  4. 公益社団法人日本公認心理師協会(2020年理事会議決)倫理綱領

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。