家族からお金の援助を頼まれ、断れず苦しいとき

家族を助けたい気持ちがあっても、自分の生活を崩してまで即答する必要はありません。相手に必要な助けと、自分がお金で引き受けられることを分けて考えられます。

「今回だけ」の後も、頼みが続くとき

説明用の例です。親から生活費を頼まれ、貯金から送ります。翌月も同じ頼みがあり、「育ててもらったのに断れない」と自分の通院や必要な支払いを後回しにします。お金の額だけでなく、断るとどんな人だと思われるかが苦しくなっている場面です。

ここでは、親を大切に思うこと、暮らしに困っている事実、自分が負担できる金額や期間が混ざっています。愛情があるかどうかを、送金できたかだけで測らないことが大切です。助けたいが続けられない、過去の関係を思うと助けること自体に迷うなど、矛盾する気持ちも話せます。

相手が困っている理由が分かっても、その全てを自分だけで解決できるとは限りません。支出の不足、借金、病気や介護などでは、必要な窓口が違います。家族の誰か一人の財布だけで支え続ける以外の方法を、確かめる余地があります。

すぐ返事をする前に、頼まれていることを確かめる

援助として渡すのか、返す予定のお金なのか、毎月の生活費なのかで話は異なります。「困っているから」という説明だけで、金額や次の見通しが分からないまま約束すると、互いの受け止めがずれる場合があります。先ほどの例なら、「今月いくら不足し、来月はどうなる見込みか」を尋ねる方法があります。

ただし、家族の帳簿や私生活を全て調べる役割を引き受ける必要はありません。自分が決めるために必要な範囲を確かめます。説明が得られず判断できないときは、「分からないまま継続の約束はできない」と、今の答えにすることもできます。

「今日中に振り込んで」と急かされると、相手の危機と自分の決断の速さが同じことに感じられるかもしれません。支払い期限が本当に迫る場合でも、まず制度や債務の専門相談へつなぐことが必要なことがあります。本人が借金して援助する、名義を貸す、保証へ署名するといった行動は、単なる送金とは別の責任を伴います。

自分の暮らしを先に見ても、冷たいとは限らない

家賃、食事、医療、今後必要な支払いを守ったうえで、何を引き受けられるかを考えます。細かい家計表を完璧に作る宿題ではなく、「これを出すと自分の必要な支払いができない」という線を知るためです。貯金があることと、それを全て使えることは同じではありません。

金額や期間を限定して援助する選択も、今回は出せない選択もあります。「今回この額を出すこと」と「今後も不足を埋める約束」を分けられます。相手が残念がることまで完全になくしてからでなければ、範囲を決められないわけではありません。

NHSの一般向け情報も、支える相手を大切にしながら、自分が担える範囲を考えることを勧めています。[1] これは個別の家族関係で、援助をする義務があるかどうかの法律判断ではありません。その点が争いになっている場合は、親族関係や事情を含めて法律の専門家へ確認します。

送金以外の助けと、専門窓口を分ける

生活費の不足であれば、本人が住む地域の自立相談支援機関等へ相談し、使える支援を一緒に確認する方法があります。厚生労働省は、生活・家計・住まい等の困りごとへの相談や、関係機関につなぐ制度を案内しています。[2] 支援の対象や条件は個別に異なり、相談すると必ず不足額が給付されるわけではありません。

家族としてできることが、窓口を調べる、一度同行する、必要な書類を探すことなら、それも援助です。手続きの全てを永続的に管理する約束まではしなくてかまいません。すでに自分の家計も苦しくなっているなら、頼まれた側が相談してよいのです。

名義を貸して借り入れることには返済責任が生じる危険があり、法テラスも注意を促しています。[3] 保証や契約書への署名を頼まれた場合は、その場で応じず、内容を専門家へ確認してください。すでに署名した、無断で名前を使われたなどの場合も、一般記事だけで責任の有無を判断しないことが大切です。法テラスは、法制度や適した法律相談の窓口を案内しています。[4]

断る怖さが強いときは、一人で交渉しない

安全に伝えられる関係なら、説明用の言い方として「私の必要な支払いを守るため、今までの額は続けられません。制度の相談先を探すことはできます」と、できることとできないことを分けられます。理由を何度も説明して相手を完全に納得させることまで、目標にしなくてよいのです。

一方、断ると暴力や脅しがある、口座や身分証を取られるなどの場合は、境界の言い方を練習するだけの問題ではありません。警察や法律・福祉の窓口へ、安全な連絡方法から相談してください。突然送金を止めたり、相談していることを相手へ知らせたりすることも、状況によっては危険を増やすため、一律には勧められません。

心理相談では、感謝と借り、家族への怒り、見捨てるような罪悪感を分けて扱えます。お金を出すかの正解を心理職が決めるのではなく、本人の生活と選択が見えにくくなっている流れを話します。相手の診断や、まだ確認していない借金の理由を推定して答えを出す場所ではありません。

説明用の相談の一言:「家族を助けたいのに、送るたび自分の生活が苦しくなります。金銭援助の範囲と、制度や手続きを手伝うこと、断る怖さを分けて考えたいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。心理的な迷いや負担を扱いますが、法律・家計・債務整理の個別判断は、それぞれの専門窓口で確認します。

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参考・引用文献

  1. NHS Every Mind Matters「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」
  2. 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
  3. 日本司法支援センター(法テラス)「借金をする際に名前を使わせてほしいと頼まれていますが、大丈夫でしょうか。」
  4. 日本司法支援センター(法テラス)「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。