医師とカウンセラーの説明が違って戸惑うとき|複数の支援をつなぐには

医師とカウンセラーの説明が違って聞こえたときは、自分一人で「どちらが正しいか」を決めなくてかまいません。何について、いつの状態を前提に話したのかを確かめ、必要なら支援者同士が方針を確認する方法を相談できます。

言葉が違うのか、することが矛盾するのかを分ける

説明用の例です。医師に「しばらく休みましょう」と言われた一方、カウンセリングでは「できる活動を考えましょう」と提案されました。「休む」と「活動する」が反対に聞こえ、どちらに従っても誰かを裏切るように感じています。

この二つは、仕事の負担を減らす話と、休養中の日常の過ごし方の話である可能性があります。しかし、実際に何を意味したかは担当者へ確かめなければ分かりません。「どちらも正しいから気にしない」と早くまとめるのも、片方が間違いだと決めるのも、確認の前にはできません。

「活動とは、散歩のような生活のことですか、仕事を増やすことですか」「どの程度を想定していますか」と尋ねます。同じ言葉でも対象、量、時期が違えば方針の意味は変わります。説明を分かる形にする責任を、相談者が全て引き受ける必要はありません。

比較するのは、相手の人柄より説明の条件

どちらが優しく感じたかは、話しやすさの大切な情報です。ただし、それだけで医療上の方針を決める材料にはできません。次の点が分かる範囲で伝わると、支援者は何が食い違ったかを確かめやすくなります。

  • いつ、どの困りごとを伝えた時の説明か。
  • 何を増やす・減らす話で、目的は何と説明されたか。
  • 自分は次に何をすればよいと受け取ったか。
  • その後に体調や生活がどう変わったか。

録音や正確な議事録がなくても、「私にはこのように聞こえました」で始められます。相手の発言を完全に再現できないために、相談を控えなくてよいのです。「記憶に自信がないので、今後の方針をもう一度説明してほしい」とも伝えられます。

本人の希望と、専門的な判断の両方を話し合う

本人に合う方針を考える際には、専門家の説明と、自分が大切にしたい生活の両方が必要です。NICEの共同意思決定の指針も、本人の目標や疑問、選択肢の利益と負担を対話に含めることを勧めています。[1] これは英国の医療向けの指針で、日本の全施設の提供条件を定めるものではありません。

研究で提案されている対話モデルも、選択肢を説明したうえで、何が本人にとって大切かを話し合う過程を整理しています。[2] ただし、モデルがあること自体は、どの選択が個々の人に正しいかや、治療の成功を保証する根拠にはなりません。

たとえば「家事が少しできるようになりたいが、疲れて翌日寝込むことは避けたい」という希望を伝えられます。「この提案は、医師から言われた休養の方針とどう両立しますか」と聞けば、賛成か反対かを急がず、自分にとって実行可能な内容を相談できます。

連携は、本人を伝言係にし続けるためのものではない

何度伝えても方針が分からない、別々の宿題や指示で負担が増えるなら、「私から説明するだけでは難しいので、連絡を取って確認する方法はありますか」と相談できます。公認心理師法には、関係者との連携や、支援に関わる主治医がいる場合の規定があります。[3] あらゆる相談に最初から医師の診断が必須という意味ではありません。

連携する際は、誰と誰が、何の目的で、どの内容を共有するのかを確認します。診療情報の文書、本人が持参する要点、担当者間の連絡等、方法は機関によって異なります。詳しい私生活の話まで全て共有するのか、費用や所要時間はどうかも尋ねられます。

本人の希望を確認しながら進めることが基本ですが、安全や法令上の例外がある場合もあります。公認心理師協会の倫理綱領も、自己決定への配慮と適切な協働を掲げています。[4] 連携を望まない事情があるときも、それを伝え、支援を続けるために必要な範囲と代わりの方法を説明してもらいます。

確認がつくまで、自己判断で治療を変えない

薬の中止や量の変更、休養や就業についての医療上の判断は、「説明が違った気がする」ことだけを理由に自分で変更せず、処方医等へ確かめてください。カウンセラーの一般的な心理教育が、個別の処方や診断を置き換えることはありません。

確認を待つ間に、どの行動をどう扱うか分からない場合は、担当機関へ連絡して尋ねます。急な身体の異変や、命の危険がある状態では、次の定期面談を待つのではなく医療につながる必要があります。この記事で、個々の提案の安全性や緊急性を判定することはできません。

説明用の相談例:「医師の説明と、こちらでの提案が違って聞こえ、次に何をしてよいか迷っています。私の受け取り方を確認したうえで、必要なら担当者間で方針を確かめる方法も相談したいです。」

違いを伝えることは、どちらかの専門家を責めることではありません。相談者が安心して行動を選べる説明に整えるための、大切な話題です。

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参考・引用文献

  1. NICE. Shared decision making(NG197), Recommendations. 2021.
  2. Elwyn G, Durand MA, Song J, et al. A three-talk model for shared decision making: multistage consultation process. BMJ. 2017;359:j4891. doi:10.1136/bmj.j4891.
  3. 公認心理師法(厚生労働省掲載条文)
  4. 公益社団法人日本公認心理師協会.倫理綱領(2020年9月18日理事会議決)

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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