行動活性化とは

行動活性化(behavioral activation:BA)は、うつ病に伴う回避や活動低下を生活の文脈から理解し、本人にとって意味のある活動や強化への接点を回復する心理療法です。「元気を出して動く」「楽しいことを増やす」という助言だけを指すものではありません。[1]

中心となるのは活動量そのものより、行動がどのような結果をもたらし、生活の何を狭めたり支えたりしているかという機能的な理解です。CBTの一要素として使う場合と、独立した介入パッケージとして提供する場合があります。

回避は、短期的には役立つことがある

つらい課題から離れると、一時的には負担が軽くなることがあります。しかし、その後の未処理の課題、孤立、達成感や支えの減少によって、さらに動きにくくなる循環が生じる場合があります。BAの文脈的モデルは、この短期・長期の結果の違いに注目します。[1]

一方、休養や危険を避ける行動まで一律に問題とはしません。身体疾患、睡眠不足、過大な労働、生活資源の不足などが活動を制約している場合、必要なのは負荷を増やすことでなく、環境や支援を調整することかもしれません。同じ「横になっている」という行動でも意味は異なります。

反すうも、目に見える行動だけでなく、その機能から検討できます。考え続けることで決断を先送りできる一方、現実の課題に取り組む時間が減る場合があります。ただし、考えることすべてを回避と解釈せず、その人の場面と結果を確かめます。

活動のモニタリングと計画の役割

面接では、活動、気分、状況、その後に起きたことを記録や振り返りから把握します。これは「よく動けた日」を採点するためでなく、どの条件で生活が変化しやすいかを知るためです。記録の負担が大きければ、短い振り返りなど実施可能な形に調整します。

活動計画は、その人の目的、現在の能力、必要な休息、現実の障壁に合わせて具体化します。何を、どの状況で、どれくらい行うかを共有し、結果を次の計画に反映します。活動後に気分がすぐ良くならなくても、睡眠、生活の秩序、人との接点などがどう変わったかを確認します。

負荷が大きすぎた場合は、「やる気がなかった」という結論より先に、課題の規模や時間、予測しなかった障壁、援助の不足を見直します。本人が計画の不都合を伝えられ、支援者と修正できることが必要です。

成人うつ病のレビューが示す範囲

Uphoffらの2020年のCochraneレビューは、成人うつ病に対する53研究、5,495人を検討しました。短期の通常ケア比較ではBAを支持する結果があり、CBTとの短期の効果には明確な差が示されませんでした。ただし、感度分析で結論が変わる比較や、確実性の低い比較もあります。[2]

「差が検出されなかった」ことと、すべての条件で完全に同じ効果だと証明されたことは異なります。また、レビュー全体の研究数と、ある比較・あるアウトカムに実際に含まれる数は同じではありません。長期維持、脱落、有害事象についても別に確認します。

この研究はうつ病への心理的支援についてのものです。誰にでも活動を増やすと精神健康が改善する、身体疾患による活動制限を心理的回避として扱ってよい、と一般化することはできません。介入パッケージの有効性と、活動低下の個々の原因を区別します。

COBRA試験の非劣性と、訓練の意味

COBRA試験は英国の大うつ病の基準を満たす成人の研究協力者440人をBAとCBTに割り付け、12か月のPHQ-9を主要評価として比較しました。あらかじめ定めた1.9点の限界のもとで、BAの非劣性が支持されました。[3]

BAは比較的少ない専門訓練で提供可能かという課題も検討されましたが、担当者は無訓練ではなく、試験の訓練・指導の枠組みで実施しています。「誰でも助言するだけでCBTと同じ効果」と解釈することはできません。急性の自殺リスクなど、研究から除外された状態にも注意が必要です。

費用に関する結果も英国のサービス構造に基づきます。日本での費用や利用可能性を直接保証するものではありません。実装を考える際は、担当者の訓練だけでなく、紹介、危機対応、経過測定、介入の忠実度を支える仕組みを含めて検討します。

行動の変化と生活の回復を、同時に評価する

評価では、うつ症状に加え、本人が大切にする活動への参加、回避の機能、生活上の負担、関係、身体状態を確認します。活動回数が増えても疲労や自己批判が増えたなら、成功として扱いません。活動の変化が症状改善を先行したかという機序の問いも、パッケージの有効性とは別に検討します。

躁・軽躁が疑われる活動性の増加や睡眠の変化は、うつ病からの回復と安易に同一視しません。身体疾患、薬物の影響、切迫した危機がある場合も、必要な医療的評価を含めて支援を組みます。

BAの臨床的な意義は、気分が改善するまで生活を止めるしかないという行き詰まりに、実行可能な選択肢を作る点にあります。その際には、本人の限界と環境の条件を尊重し、実践で得られた情報をもとに仮説と計画を調整し続けます。

参考文献

  1. Jacobson NS, Martell CR, Dimidjian S. (2001). Behavioral activation treatment for depression: Returning to contextual roots. Clinical Psychology: Science and Practice, 8(3), 255–270. doi:10.1093/clipsy.8.3.255.
  2. Uphoff E, Ekers D, Robertson L, et al. (2020). Behavioural activation therapy for depression in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, 7, CD013305. doi:10.1002/14651858.CD013305.pub2.
  3. Richards DA, Ekers D, McMillan D, et al. (2016). Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): A randomised, controlled, non-inferiority trial. The Lancet, 388(10047), 871–880. doi:10.1016/S0140-6736(16)31140-0.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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