性のあり方について話すとき、自分を表す名前や答えが決まっている必要はありません。「今はこう感じる」「まだよく分からない」という言葉でも相談できます。
自分を説明する言葉を、急いで選ばなくてよい
恋愛感情や性的な惹かれがどのような相手へ向くかに関わる「性的指向」、自分の性をどう感じるかという「性自認」、服装や振る舞いなどの「性表現」は、分けて考えられます。恋愛感情と性的な惹かれが一致しない人、他者への惹かれを感じない人もいます。言葉を知って楽になる人もいれば、今は特定の呼び方を使いたくない人もいます。話す相手に理解してもらうために、先に一つへ決める必要はありません。
自分の感じる性が、出生時に割り当てられた性と違うことも、心の病気という意味ではありません。WHOは、こうした性のあり方を精神疾患の分類から外しています。心理相談も、性のあり方を「正しい形へ直す」ためのものではなく、自分がどう感じるかや、周囲からの扱いで困っていることを話す場所にできます。
日常の困りごとから話してもよい
例えば、申込書の性別欄を選びづらい、戸籍上の名前で呼ばれるのがつらい、家族に相談のメールを見られたくない場面を考えます。自分の性をすべて説明しなくても、「普段の呼ばれ方で話したいです」「家族が見る連絡にはこの名前を使ってください」と、必要なことを伝えられます。
相談先がその希望にどう対応できるかは、事前に確認できます。話したい内容より説明に力を使ってしまう場合は、「用語の説明からではなく、今困っていることを先に聞いてほしい」と頼むこともできます。
自分の性と、周囲から受ける負担は別
性のあり方そのものではなく、偏見や差別、それを予期して警戒すること、人に知られないよう気を張り続けることが、心の負担に関わるという「マイノリティ・ストレス」の考え方があります。Meyerの論文は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの人々について、理論と研究を整理したものです[1]。すべての性自認や個人の経験を、その論文だけで説明できるわけではありません。
この見方を知ると、「自分が気にしすぎるせい」とだけ考えずに済みます。実際に差別を受けたこと、反応が分からず警戒していること、自分に否定的な言葉が浮かぶことは、関係していても同じ問題ではありません。職場での扱いを変える助けが必要なのか、安心できる場所で気持ちを話したいのか、今困っていることに沿って支援を選べます。
誰に伝えるかは、本人が考えること
家族や友人へ話したい気持ちと、知られるのが怖い気持ちが同時にあることがあります。今は伝えない、一人にだけ話す、反応を確かめながら少しずつ話すなど、選び方は一つではありません。相談したから、家族へ打ち明けることを目標にしなければならないわけではありません。
伝える相手を考えるときは、その人の反応だけでなく、住まいや学費、仕事など暮らしへの影響も見ます。住む場所を失う心配や暴力の怖さがある場合、まず専門の相談先と安全や生活の支えを考えられます。無断で人へ伝えられることが心配なら、相談内容が誰へ伝わる可能性があるか、詳しく話す前に尋ねられます。
警戒心を弱めることを、いつでも相談の目標にするわけではありません。知られた場合に暮らしへ危険があるなら、慎重さには理由があります。話すことで得られそうな支えと、失うかもしれない安全の両方を考え、伝えない選択も尊重される必要があります。また、落ち込みや眠れなさが強い場合に医療を使うことと、性のあり方を病気扱いすることも別です。必要な症状への助けは受けられます。
話してみて、理解されなかったとき
否定された、決めつけられた、気持ちを変えるよう求められた場合も、それを自分のあり方の問題にする必要はありません。性の多様性に関する専門相談や、別の心理職を探す道があります。東京都の案内のように、地域の公的な相談先から情報を得ることもできます。利用できる地域や方法は、それぞれの窓口で確認してください。
心理相談では、性のことに加えて、恋愛、仕事、家族など普通の暮らしの悩みを話してもかまいません。性のあり方だけで、その人のすべてが説明されるわけではありません。ALVARAの個人向け相談は18歳以上が対象で、18歳未満の方は学校や地域の子ども・若者向け窓口などが選択肢になります。
参考資料・引用文献:東京都「若ぽた+・性自認及び性的指向に関する専門相談」 / WHO:ICDにおける性別不合とトランスジェンダーの健康 / [1] Meyer IH. (2003). Prejudice, social stress, and mental health in lesbian, gay, and bisexual populations: Conceptual issues and research evidence. Psychological Bulletin, 129(5), 674–697. DOI:10.1037/0033-2909.129.5.674. / 法務省ウェブサイト掲載資料「性の多様性についての基本知識」
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
