持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure: PE)は、PTSDに対して構造化されたトラウマ焦点認知行動療法です。体験の記憶や、現在は安全な関連場面への回避を計画的に扱い、生活を狭めている恐れと回避の関係を変えることを目指します。実際の危険へ身をさらすことや、本人の同意なくつらい体験を語らせることとは異なります。[1]
記憶への回避と生活上の回避
PTSDでは、記憶を思い出させる場所や会話、身体感覚を避けることが、短期的には苦痛を減らす場合があります。一方、回避が広がると、安全な状況を経験し直す機会や、必要な活動、人とのつながりを失うことがあります。PEは、記憶へのイメージ曝露と、安全を確認した生活場面での現実曝露を含む心理療法モデルです。[1]
同じ「避ける」という行動でも、継続する暴力から距離を取ることは保護に必要です。介入で扱うのは、本人の状況を評価して対象を定めた回避であり、現在の危険を無視することではありません。危険と想起の手がかりを区別する評価を省いた曝露は、研究された介入を実施したことにはなりません。
「持続」という名前は、苦痛が強くても休まず耐え続けるという意味ではありません。介入の理由、予定される作業、負担への対応を共有し、本人と共同で進める構造を持ちます。本稿は自分で記憶を反復して思い出すための指示ではありません。
研究で用いられた介入の構造
Schnurrらの2007年の多施設無作為化比較試験は、PTSDの女性退役軍人277人と現役軍人7人を対象に、10回の週1回・90分のPEと、現在中心の支持的な心理療法(present-centered therapy)を比較しました。PEではPTSD症状の重症度の低下がより大きく、積極的な対照療法との比較から有効性が支持されています。[1]
ここでの回数や面接時間は、研究の実施条件です。全員にそのまま適用する処方や、一定回数での寛解を保証する数字ではありません。実際には、評価、合意した支援計画、面接間の取り組みを含む生活上の負担、症状の変化に応じて進め方を検討します。
介入の名称だけでは、実施内容が分かりません。PTSDに関する心理教育、記憶と生活場面を扱う作業、面接後の振り返り、面接間の課題の有無などを確認します。支援者の訓練と相談体制、症状や生活機能を追跡する方法も、研究結果を実際の支援へつなぐ条件です。
一時的な症状増加と持続的な悪化
記憶に注意を向ける介入について、「必ず症状が悪化する」という懸念と、「負担は一切ない」という説明はいずれも適切ではありません。Foaらの2002年の研究は、慢性PTSDの女性76人で、測定の誤差を踏まえた症状増加を検討しました。一部に一過性の増加がありましたが、その増加は脱落と関連せず、増加した人も同程度に介入を通して改善しました。[2]
この結果は、どの人にも無害だと証明したものではありません。小規模な特定集団の研究であり、現在の危険や重い不安定さのある全ての状態へ一般化できません。セラピストは、不快な感情が生じることと、生活機能や安全が損なわれる持続的な悪化を区別して評価する必要があります。
「つらさが増えたら効果が出ている」「止めたら全て回避になる」という決めつけは避けます。何がどの程度続いているか、睡眠や仕事、解離、安全にどんな影響があるかを確認し、支持、実施量、対象、別の医療支援の必要性を見直します。本人が負担や継続への迷いを伝えられる関係も重要です。
馴化だけを成功指標にしない
PEでは恐れていた記憶や状況に関する理解が、介入での経験を通して変化することを目指します。その場で不安が下がることは一つの情報ですが、低下しなければ全て失敗と考えることはできません。介入中の主観的な苦痛、後日の再体験や回避、生活機能は、異なる時点と水準の変化です。
例えば、面接中の緊張が残っていても、安全な交通機関を使える、必要な会話を避けずにできるという生活上の変化があるかもしれません。逆に、面接中だけ落ち着いても、生活の回避が広がっているなら計画の検討が必要です。本人の生活目標へ戻って経過を評価します。
曝露による学習を説明する理論には複数あり、単一の機序が全ての改善を説明すると確定してはいません。研究で有効性が支持されることと、説明の全ての要素が因果的に証明されていることを分けるのは、PEに限らず心理療法を理解する基本です。
適応評価と共同意思決定
PTSD症状に加え、現在の安全、解離、抑うつや気分の不安定さ、物質使用、身体状態、面接外の生活条件を評価します。研究の除外基準は、その状態の人へ永久に適用できないという意味ではありませんが、当該研究の結果だけでは判断できない範囲を示します。
他の療法と比較する際には、記憶を扱う形式、面接間の練習、面接時間、本人の好み、通院の条件を共有します。PEの説明を聞いて希望しない場合にも、その理由を理解し、別の有効な方法を検討することができます。本人の希望を聞くことと、効果の根拠を説明することは両立します。
担当者には、PTSDへのアセスメント・支援技能と、PEの訓練や指導体制が求められます。ALVARAがPEを必ず提供するという案内ではありません。PTSDの心理療法を選ぶときでは、CPT、EMDR、WETとの相違を整理しています。
参考文献
- Schnurr PP, Friedman MJ, Engel CC, et al. (2007). Cognitive behavioral therapy for posttraumatic stress disorder in women: a randomized controlled trial. JAMA, 297(8), 820–830. 論文・書誌情報(DOI: 10.1001/jama.297.8.820)
- Foa EB, Zoellner LA, Feeny NC, Hembree EA, Alvarez-Conrad J. (2002). Does imaginal exposure exacerbate PTSD symptoms? Journal of Consulting and Clinical Psychology, 70(4), 1022–1028. 論文・書誌情報(DOI: 10.1037//0022-006X.70.4.1022)
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このコラムについて
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