話していると涙が出るとき|伝えたいことと涙への戸惑いを相談する

話していると涙が出ても、伝えたいことの正当性が失われるわけではありません。涙を完全に止めることより、何を伝えたいかと、どんな進め方なら話を続けられるかを分けて考えられます。心理相談にも、泣かずに説明できるようになってから行く必要はありません。

涙だけでは、気持ちも目的も決まらない

怒っているのに泣いてしまう。説明したいだけなのに、声が詰まって「そんなに悲しかったの」と聞かれる。自分でも驚いて、何の話だったか分からなくなることがあります。涙が出たからといって、悲しみだけ、相手への非難だけ、話を続けたくないという意味だけには決まりません。

泣くことの研究では、気分への影響は一様でなく、どんな状況で泣いたか、周囲がどう反応したかなどによっても異なると整理されています。[1] 「泣けばすっきりする」も「泣くと弱くなる」も、すべての人に当てはめる説明ではありません。涙を出すこと自体を、回復や本音の証明にしなくてよいのです。

話す相手が評価する立場なら、内容に加えて、泣いてどう見られるかも気になるでしょう。「涙は出るけれど、話の内容は考えてきた」「今日は結論を急いで決めたくない」など、涙と話す目的を分けて伝える言葉を持てます。

「泣いたら何が起きそうか」を整理する

困っているのは涙そのものかもしれませんが、泣くことで起きると予想することが、よりつらい場合もあります。迷惑がられる、幼いと思われる、相手が話を打ち切る、希望を言う前に慰められて終わるなど、心配の中身は人によって違います。

ここからは説明用の例です。職場で担当業務の見直しを申し出ようとすると涙が出て、「今日はもう休んで」と言われ、肝心の分担が決まらない場面を考えます。この場合、必要なのは泣かない人になることだけではありません。休憩が必要なことと、業務の調整を別の時間に必ず扱うことを、正式な窓口で相談する必要があります。

「涙が出ることがありますが、相談したいのは仕事の分担です。少し休んだ後に続きを話したいです」と、先に目的を添える案があります。もちろん、これで相手が理解するとは保証できません。実際に侮辱されたり、泣いたことを理由に不利益を受けたりしているなら、その扱い自体を人事などへ相談する対象にできます。

内容を、声以外にも置いておく

声が出にくくなっても用件を失わないために、短いメモを用意する方法があります。長い説明書にしなくても、「困っていること」「今日決めたいこと」「持ち帰りたいこと」が一つずつあれば、相手へ見せたり自分で戻ったりできます。準備ができない日は、用意してからでないと話せないわけではありません。

説明例なら、「担当が重なり期限が守れない」「優先順位を確認したい」「今日すべて引き受ける返事はしない」と書けます。感情の説明と業務の判断を混ぜずに残せれば、泣いている間に話が別の方向へ進んだときも戻りやすくなります。

メールや書面を使うか、誰を同席させるか、休憩後に再開できるかは、相手や機関の運用を確かめます。会社へ渡すものなら、診断歴や過去の経験を必要以上に盛り込まず、目的に必要な内容を選べます。大切な話だからといって、すべてを一度に公開する必要はありません。

家族や友人との会話でも、「今はうまく話せないので、あとで短く送ります」と区切る選択があります。ただし、暴力や威圧がある場合に、伝え方を工夫して二人で話し合うことを優先する必要はありません。安全な専門機関や第三者へ相談する道を考えます。

泣き方より、会話の条件を変えられるか

その場で選べるなら、少し間を置く、飲み物を口にする、短い文章で話す、別の日時に続きをするなどの方法があります。涙を止めるために息を極端に操作したり、苦しくても話し続けたりする課題ではありません。合わない工夫を続ける必要はありません。

「泣くと相手が怒るから絶対に泣けない」という環境では、自分の落ち着き方だけに焦点を当てると、相手の反応の問題が見えなくなります。話す場所、相手、時間、同席者を変えられるかを考えることも重要です。関係を保つために、怖さを一人で処理しきる責任を負わなくてかまいません。

泣かなかった日を成功、泣いた日を失敗とすると、会話の前から自分を監視することになります。振り返るなら、「用件を一つ残せたか」「不本意な返事を急がなかったか」「続きの相談先が決まったか」のように、内容と安全を見ます。涙があっても、できたことは別にあります。

心理相談では、最初に進め方を相談できる

「重要な話ほど涙が出ます。急いで質問されると分からなくなるので、少し待ってほしい」と伝えられます。話せなくなったときの合図や、メモを使えるかは担当者へ確かめます。特定の機関がすべて対応できると約束するものではありませんが、希望を言葉にすることはできます。

涙が出る場面だけでなく、睡眠、気分、集中、日々の用事への影響も話せます。米国NIMHも、心の症状を相談する際には、始まった時期や頻度、生活への影響などを具体的に伝えるよう案内しています。[2] 急に以前と違う泣き方が始まったり、ほかの身体の変化が伴ったりするときは、心理だけの問題と決めず医療で相談してください。

逆に、涙が出ないまま重い話をしても、つらさが軽いとは限りません。相談を受けるために、相手が分かりやすい感情表現を用意する必要もありません。

今日持ち帰れる一文は、「涙は出ていますが、伝えたいことはこの点です」です。涙を説明しきることと、必要な用件を伝えることを分けてよいのです。相談の場でも、うまく話すことを先に達成するより、話しにくさごと扱うことから始められます。

関連する内容は、オンラインカウンセリングとは|初回の流れ・話すこと・選び方、心理職に相談できること、来談者中心療法とは|ロジャーズの3つの基本姿勢とカウンセリングの進め方でも読めます。

参考・引用文献

  1. Gračanin, A., Bylsma, L. M., & Vingerhoets, A. J. J. M. (2014). Is crying a self-soothing behavior? Frontiers in Psychology, 5, 502. doi:10.3389/fpsyg.2014.00502.
  2. NIMH. Tips for Talking With a Health Care Provider About Your Mental Health.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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